先月,長い間想いを寄せていた彼女に告白した。
奇跡的に彼女は受け入れてくれた。
彼女は僕にとって,暗闇の中で遠くの方にやっと見つけた
たったひとつの光のような存在だった。
精一杯手を伸ばしても絶対に届かない、
僕とは違うキラキラした世界にいる人だと思っていた。
それが今,僕の隣で僕の手を握って歩いている。
「ありがとうございます。」
何故だろうか。
急にお礼が言いたくなった。
京さんはやはりきょとん,とした顔をしている。
ああ,可愛い。愛おしい。
思わず抱き締めたい衝動に従ってしまった。
その細い肩を,さらさらの髪をきゅ,と緩く抱き締めた。
「け,賢くん?」
「付き合ってくれて,ありがとうございます。」
数秒の沈黙の後,京さんは優しく腕を回してくれた。
「賢くん,は,さ。かっこよくて頭もよくて運動もできて…」
「え,」
「でもあたしは,可愛くないしバカだしうるさいし…」
「京さん…?」
何を言わんとしているのかわからず,顔が見たくなって腕を緩めた。
「でもね,」
京さんは僕のシャツをぎゅ,と強く握った。
「そんなこと,関係ないって思ったの。
賢くんが望んでくれるなら,私はずっと賢くんのトナリにいる。」
一度緩めた腕を,今度はさっきよりもきつく抱き締めた。
「僕なんかに京さんは絶対手が届かない存在だと思ってた。京さんが僕の告白を
受け入れてくれても,そう思ってたんだ。」
「うん」
京さんは泣きそうな,消えてしまいそうな,でも悲しくはなさそうな声で頷いた。
「でも,やっぱり,京さんのトナリがいい…です。」
最後の一言がすごく恥ずかしくて,小さな咳払いをした。
「…ありがと」
京さんはさっきと同じような声で呟いた。
京さんが生まれてきてくれたこと、僕が生まれてこれたこと、
京さんと出会えたこと、僕の気持ちを受け入れてくれたこと、
今、こうして一緒にいれること。
僕は京さんの声を繰り返すように、心の中で「ありがとう」と言った。
◆END◆
付き合ってくれて、ねぇ、ありがとう。
”メリ*クリ”いいですよねw