「賢くん、ココは?」
「ん-、ソコは、動詞によってthat節にshouldはいるから‥」
今日は、賢の家で勉強会。
京は受験勉強、賢は期末考査のための勉強。
賢は以前ほどの天才少年ではないが、中3の課程はとっくに終了しているため
京
に勉強を教え、自分は京が全く理解出来ない程難しい問題を解いている。
京が賢に質問して、今まで向い側にいた賢が京の隣に移動して、2人の顔が近づ
く 。
説明を一通り終えると、甘い雰囲気に切り替わるが。
『賢ちゃん』
現実に引き戻すように、二重に聞こえた声。
びくっとして少し離れると静かにドアが開かれ、母親の顔が現われる。
「おやつ持ってきたわよ。そろそろ休憩したらどう?」
おぼんには紅茶と、シフォンケ-キがのっていた。
「わ-い!ケ-キだぁ★」
「おいしくないかもしれないけど…まだまだあるからたくさん食べてね。」
「えっ手作り-!?すご-い!おいしそ-!」
「簡単なのよ。じゃあ賢ちゃん、ママ今からお仕事に行って来るわね。」
母親が部屋をでて、しばらくして玄関のドアが閉まるのを確認すると、
先程の甘
い雰囲気が2人に戻ってくる。
「‥ちょっと、休憩しようか」
賢がそう言うと、京の提案でベランダに出て外の風に当たることになった。
「ん-っ天気いい-っ気持ちい-っ」
京は背伸びをしながらうれしそうに言う。
その天気がいいだけでこうも笑顔になっている様子を見て、
賢は京の頭に腕を回
し、京が少し苦しくなるくらい、きつく抱き締める。
「けけけ賢くん?!」
賢の突然の行動に戸惑う京。
出会った当時は京と変わらなかった身長も、今では賢が頭一つ分くらい高い。
最近、京は賢に抱き締められるたび、背が伸びたことや体格が男らしくなっていること
を実感する。
次第に京はうれしくなってきつく抱き締め返す。
賢は窓にふと気配を感じて目だけを動かして見ると、ワ-ムモンが恐ろしい形相で
窓に張りついていた。
しかし今の雰囲気を壊したくなく、悪いとは思いながら目を背けた。
「賢くん。」
「はい?」
「‥背ぇ、伸びたね。」
「京さんソレこないだも言いました」
賢が笑いながら言い、体を離し目を合わせる。
京は少し顔を赤らめていてとても可愛らしい。
賢がそのまま口付けようとするが。
ばんっばんっ
窓から激しい音が聞こえた。
2人が驚いて見ると、ワ-ムモンが窓にむかって体当たりしていた。
「ワ-ムモン?」
京がきょとんとした表情で見て、窓を開ける。
「どうしたの?」
京が問うが、京には答えず賢に飛び付く。
「賢ちゃん!今日はお勉強じゃないの?なんでお勉強しないの?」
ワ-ムモンが甘えた声で言う。
賢は困って言葉をつまらせる。
「ワ-ムモン」
京はやさしい声の調子で話し掛けると、賢が抱いていたワ-ムモンを抱き上げた。
「1人にしてごめんねぇ。」
「………」
「じゃあ、今からワ-ムモンも一緒にお勉強しよっか?」
「お勉強するって‥何を?」
「英語♪もしワ-ムモンが英語ペラペラに喋れたら、通訳としていつでも一緒にいられるんだよ-♪」
実際賢は英語はある程度喋れるから通訳は必要ないが、
ワ-ムモンはこれを聞くと目を輝かせて、する!と言った。
京は部屋に入ると自分のバッグからMP3を取出し、ワ-ムモンの耳にあて、一冊
の本を渡した。
「はい、コレが日本語。ココが巻き戻しで‥」
京が一通り教えるとワ-ムモンは夢中になって聞いている。
2人の様子を見ていた賢が口を開いた。
「‥すごい。京さん。」
「ん-?」
京はついでにバッグの中を整理していた。
「前はこんなことがあるたびにワ-ムモンとケンカしてたのに。」
「あははっあたしも大人になったのよ♪あ、ね-ケ-キ食べよ-よぉ」
京らしさが微笑ましいと思いながら返事をして椅子に座る。
「それにね」
京が紅茶に手を伸ばしながら言いかけた。
「何?」
「似てきたんだも-ん」
「えっ何が?」
賢にはわけが分からない。
京は笑みを浮かべながら続ける。
「あのね、ワームモンが拗ねてるトコ、賢くんが拗ねてるときと似てるんだもん。
だから、なだめる方法が身についちゃったの。」
先ほどのワームモンの行動を思い返す。
「・・・似てるかなあ。」
「似てる似てる!」
「似てないですよお。」
「自分が拗ねたときのこと思い返してみなさい♪」
言われたとおり、思い返してみる。
一番最近こんなことがあったのは、京さんがクラスの男子と一緒に帰っているのを
見たときだ。
「・・・あ」
「ね?」
顔を合わせたらなんだかおかしくなって、2人で笑っていると、
ワームモンがまただだをこねだした。
◆END◆
ホワイトデーものを仕上げないと・・・!