THE OPENING
昇格と共に配属が変わるという通知が届いたのは約1ヶ月前。
新しい配属先はグランドラインの入り口で、海賊で溢れかえる街らしい。
上司は、お前の働きに期待している、と言っていた。
同僚達は羨ましがったり、僻んだりだった。
「女のお前に曹長なんか務まらねえよ」
なんて屈辱的なコトバを吐いた人もいた。
そういうコトバにはもう慣れたけど。
そして今、新しい上司の部屋の前にいる。
新しい上司の話はよく耳にした。
何とかのスモーカーという異名(聞いたけど忘れちゃった)を持つ、恐ろしく強い人だときいている。
緊張で体が硬直しているのがわかる。
ひとつ深呼吸をして、ドアを叩く。
「はじめまして、本日から配属になりました、たしぎと申しますっ」
「入って来い」
しばらくして心の底まで響くような低い声で返事があった。
失礼します、といってドアを開ける。
ドアを開けると、私は夢を見ているような感覚に襲われた。
目の前がもくもくと灰色の煙で多い尽くされ、部屋の中はほとんど見えない。
「・・っ、げほっ」
その喉に来る痛みと匂いで、それが煙草だとすぐに判った。
「こっちへ来い」
低い声で言われたのをやっと聞いて、前方が見えにくいので注意して進む。
「きゃあ-!」
何かに躓いてしまった。
が、倒れずに何かに支えられた。
見上げると、それがたぶん新しい上司のスモーカー大佐だと感じた。
「わあっ、あの、すみません!!」
「いや・・」
「きゃあっ」
スモーカー大佐から離れたとたん、またつまずく。
こんどは手を引かれて、胸の中に納まっていた。
「ここでじっとしておけっ1ミリもうごくんじゃねえっ」
「はいッ」
やってしまったあ、と思いながら直立。
スモーカー大佐が窓を開けると煙は外へと逃げていった。
やっと全貌が明らかになったスモーカー大佐は、銀髪で顔色が悪く、目つきが鋭い、いかにもこわそうな人。
大きなイスに腰掛けると、煙草を燻らせながら
「で?何だって?」
と問い直す。
「あたらしくここに配属になりました、たしぎですっ」
たぶん第一印象最悪だったから、せめて挨拶だけでも、と思い、声を張り上げた。
「は?・・・てめえ、もう1回言ってみろ」
「新しく・・・」
「っざけんじゃねえッ・・・っクソッ」
「え・・・」
大佐はその場で電々虫に向かって怒鳴りはじめた。
「おい、誰が女よこせって言ったんだ。俺は使えるのをよこせっつったんだ。
女なら間に合ってる」
「あら、誰もそんなつもりでたしぎをやったんじゃないわ。
でもあなたの女性関係の素行の悪さったら有名よ。ヒナ友達としてはずかしいわ。」
聞こえてきたのはなつかしい昔の上司の声。
「こいつのどこが使えるんだ」
「たしぎは剣の使い手として最高よ。なにより従順だし。」
「・・チッ」
舌打ちをすると荒々しく電話を切った。
「あの、さっきはすみませんでした!これから頑張りますので、よろしくおねがいしますっ!」
スモーカー大佐から移動を言い渡されるのが怖くて、それだけ言い残すと足早に退室・・・しようとした。
「きゃあ!」
「おい!!!!!」
大佐はまたしても、私の体を支えてくれた。
今度こそ終わりだ・・・っと目をつぶった瞬間、さっきまでの声からは想像もつかないような優しい声で言った。
「一生懸命やるのはわかったから、転ぶな。戦いでころんで死ぬなんてアホな真似はしたくないだろ」
「はいっありがとうございました!」
怖いんだけど、なんだかとっても優しい上司。
私は何回も怒鳴られたにもかかわらず、心の中でスキップしながら新しい自室へと向かった。
それが、私とスモーカーさんとの、出会いだった。
初★スモたし・・・
きゃあああ恥ずかしい(*ノωノ
無理無理!!!
◆ナンナ◆